土壌汚染対策の現状と当社の対策事例紹介
矢作建設工業(株)設計部 早 川 国 男
1.土壌汚染対策の現状と課題
平成15年に土壌汚染対策法(以下、法)が施行されてから、土壌汚染の調査・対策工事のビジネスは、その件数、金額ともに増加していることが、環境省や社団法人土壌環境センター(以下、土環センター)から報告されている。しかし、図-1のように平成19年度の統計では、件数はほぼ横ばい、受注金額は約2割減少している。愛知県内については、図-2のとおり、全国の統計とは若干異なり、平成16年に急増後、それ以降は大きな変動は見られない
それらの調査や対策工事を行う契機については、その8割以上が企業等の自主的対応により行われている。また、土壌環境センターの統計では、自主的対応のうち半数以上は、土地の売買が契機となっている。冒頭に述べたように、法が施行されてから調査や対策工事数は増加しているが、実際は、法や条例が契機となっている件数は2割に達していない。このように、法により定められた土壌汚染の規制値は、その意とうらはらに、土地の売買の際に、一つの目安として用いられているのが現状である。
さらに、対策方法について、環境省の統計では、浄化対策(掘削除去、化学的分解、バイオレメディエーションなど)が全体の3分の2を占めている。特に、掘削除去による浄化対策は、一般にコストが高いにもかかわらず最も多く行われている。このことが、一方で別の課題を生んでいる。特に、土地の価値に対する、対策費用の高額化による“ブラウンフィールド”問題は、今後の大きな課題と言われている。すなわち、地価の低い地域では汚染対策が不可能となり得るため、土地が未使用のまま放置されるおそれがある。これは、土壌汚染対策法の主旨が健康被害の防止であり、土壌汚染をとり除くことではないということが、一般によく理解されていないことが要因の一つであると考えられる。本来、覆土や舗装で十分、健康リスクが低減できるような軽度な汚染でも、現状は、掘削除去のような高額な処理方法で行われている。