二つめは、工場の移転に先立ち土壌調査を行ったところ、深さ5mに達する土壌汚染が判明した事例である。掘削除去による対策方法では、事業者の工場移転の資金計画に大きな影響を与えるものであった。そこで、跡地は店舗として利用することとし、汚染土壌を不溶化し、かつ、駐車場を配置して地表面への経路を遮断した。土壌汚染対策と跡地の利用方法を同時に考慮し、次に土地を活用する人への理解を図り、コストの過大な負担による経営の悪化や、移転計画の頓挫を回避した事例である。
ちなみにこの現場では図-7のような、ロータリーブレンダーと呼ばれる機械を使い、原位置で不溶化を行った。従来この方法は、軟弱地盤にセメントを混合・撹拌して改良するものであるが、ここではこれを不溶化処理に応用した。
この方法は汚染土を掘削しないので、汚染の深さは5mであったが土留めは不要であり、周辺地盤に影響を与えずに済んだ。また、不溶化材はスラリーであるので、粉じんの飛散もなかった。
三つめは、建築工事と合わせて土壌汚染対策を考慮し、結果的に土壌汚染を封じ込めた事例である。ここでは、含有量のみが基準値を超え、溶出量は基準を超えていなかった。さらに、地下水位よりも上に土壌汚染がとどまっていた。そのため、図-5のように建築工事の際に汚染が暴露しないよう全体に盛土を行い、汚染範囲の上に建築物を配置し、雨水浸透や人の直接接触がないようにした。建築物の配置や高さを調整することで、土地の利用方法を変えずに、土壌汚染の対策コストを抑制した事例である。
このように、土壌汚染の解決は、実は汚染をとり除くことだけではない。そのため、土壌汚染の対策方法だけを考えるのではなく、事後の土地利用をふまえたうえで合理的な方法を選択することが重要である。そのため調査から対策工事だけではなく、土地開発や建築工事まで含めた取り組みが合理化やコストダウンにつながり、それがひいては、地域の活性化や都市資産としての価値の向上につながるものと考える。